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函館地方裁判所 昭和44年(ヌ)44号 決定

〔主文〕本件不動産強制管理決定の申請を却下する。

〔理由〕一、債権者の求める裁利およびその理由。

債権者は、債務者に対し、函館地方法務局所属公証人渡辺礼之助作成昭和四二年第三六〇二号公正証書の執行力ある正本に基づき金六万一、五二三円の自動車売買残代金債権を有するところ、債務者はその支払いをせず、かつ、他からも相当債務を負担しその動産類一切は競売処分となり、亀田郡亀田町字港四一〇番地三八所在の木造モルタル塗亜鉛メッキ鋼板ぶき平家建居宅(床面積61.67平方米)一棟(以下本件建物という)のみが唯一の財産であるが、これについてもその価格を上回る抵当権が設定され、競売しても余剰はなく、本件建物はその居住者であつた債務者が差押中の動産類をも他に搬出して所在をくらましたため空家となつているので、このまま放置するよりは、これを他に賃貸し収益を図ることは債権者にとつても債務者にとつても有利であるとして、本件建物につき強制管理手続の開始を求めた。

二、当裁判所の判断。

(一) 強制管理は不動産の収益をもつて金銭債権の満足にあてる執行方法であり、債務者が右収益を失うことおよびそれに付随すること(例えば、民事訴訟法七一一条二項は、強制管理の実効を期するため管理人が自ら不動産を占有することができる旨を定める)以上の事実上ないし経済上の不利益をこうむる場合には、強制管理制度の趣旨に合致しない不適法のものとして、強制管理手続を開始すべきではないと判断するのが相当である。

(二) そこで、次に、本件において強制管理手続を開始し管理人が本件建物を第三者に賃貸した場合の効果について考えてみると、債権者提出にかかる建物登記簿謄本によれば、本件建物には、債権額金五〇万円の抵当権(昭和四二年八月二一日登記受付)および債権極度額金一七〇万円の根抵当権(昭和四三年一一月五日登記受付)がそれぞれ設定されており、もし本件建物につき民法三九五条に定める短期賃貸借とみられる可能性のある契約が締結されるならば、これら抵当権の実行の際競売価格が実際上低下するのは避けられないところであり、債務者は前記事実上ないし経済上の不利益をこうむることになるから、本件強制管理の申立は不適法である(民法三九五条にいう短期賃貸借にあたる可能性が全くないような契約は、これら抵当権の実行によつてその賃借権が覆滅されるため、締結を期待することが困難である)。

(三) なお、念のため付言すると、本件については、債務者が現に収益権を有していない点および賃貸借契約の締結が管理人の権限内であるか否かの点について検討の余地があるばかりか、実際上も、賃貸借契約が締結され、賃借人が一旦入居しても、民法三九五条但書により抵当権者から賃貸借契約の解除を請求される可能性があつてその地位は極めて不安定であるという弊害もあるから、現在空家になつており債権回収に好都合であるからといつて直ちに強制管理制度の趣旨に合致したものとみるのは相当ではない。

(四) よつて、債権者のその余の主張について判断するまでもなく、本件申請は不適法として却下すべく、主文のとおり決定する。(高野昭夫)

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